LTV(Life Time Value=ライフタイムバリュー)を向上させる施策には、大きく「アップセル・クロスセル」「高額商品」「サブスクリプション」の3つがあります。この記事ではアップセル・クロスセルについて学ぶことができます。
LTVを高めるには顧客に対して、何度もバックエンド商品を販売していくことが重要です。そのためには、アップセル・クロスセルがとても有効です。ここでは、そもそもLTVとは何か、アップセル・クロスセルとはどのような手法か、どのように取り入れればいいのかということを解説していきます。
目次
LTV(ライフタイムバリュー)とは
まず、LTVとは何かということを理解していきましょう。LTVはLife Time Valueの略で、日本語で「顧客生涯価値」といいます。つまり、1人の顧客が一生涯にもたらしてくれる粗利益の平均額のことです。
例えば、A社という携帯電話会社があり、A社は平均して毎月5,000円の通信費がかかるとします。わかりやすくするために、この5,000円は全て利益だと仮定します。そして、顧客は平均して3年間継続して契約しているとしましょう。この場合のA社のLTVは18万円となります。計算式は次の通りです。
平均購買単価5,000円 × 購買頻度12回(年間) × 継続購買期間3年=180,000円
LTV(Life Time Value)はこのように計算されます。
ジェイ・エイブラハムの「売上の方程式」
ところで、世界的なマーケティングコンサルタントであるジェイ・エイブラハムが提唱している「売上の方程式」というものがあります。
ジェイ・エイブラハムは、総収入は「クライアント数 × 客単価 × 取引回数」で決まると言っています。つまり売上を増やすには、クライアント数を増やすか、クライアント一人当たりの平均販売額を増やすか、クライアントの購入する頻度を増やすか3つの選択肢しかないということです。
そしてLTVを高める施策とは、「クライアント一人当たりの平均販売額を増やす」ことと「クライアントの購入する頻度を増やす」ことを目的にしています。
LTVを高めるにはバックエンド(同じ顧客に2回目以降に販売する商品)を複数用意し、可能な限り何度もセールスしていくことが鍵です。そして、バックエンドをアップセルやクロスセルというかたちで販売することにより、LTVを効率よく向上させることができます。
※フロントエンドとバックエンドについては以下の記事を参照ください。
客単価を上げる4つの施策
LTVを向上させるには客単価を上げなければいけません。客単価を上げるには高額な商品を購入してもらうか、一度に複数の商品を購入してもらう必要があります。ここでは、一度に複数の商品を購入してもらう手法を解説します。
客単価を上げるために、次の4つの施策が有効です。
- アップセル
- クロスセル
- バンドル
- 松竹梅
アップセルとクロスセルは顧客が商品を購入した直後に別の商品を提案する手法です。バンドルは抱き合わせのことで、複数の商品をまとめて販売すること。松竹梅は、商品グレードを3段階に分けて販売する手法です。
これらの手法を取り入れることで、効率よく客単価を上げることができます。それぞれ詳しく解説していきます。
客単価を上げる手法1:アップセルとクロスセルとは
客単価を上げる手法の中で、最も簡単で、かつ効果的なのが「アップセル・クロスセル」を取り入れることです。
アップセルとは、ある商品を購入した人に、その商品の上位版をすすめて販売する手法のこと。例えば、チーズバーガーを購入するお客さんに、ダブルチーズバーガーを提案するということです。
クロスセルとは、ある商品を購入した人に、関連商品をすすめて販売する手法のこと。例えば、チーズバーガーを購入するお客さんに、フライドポテトを進めるのがクロスセルです。
そして、アップセルとクロスセルを取り入れれば客単価が上がります。人は購買を決めるまではとても慎重ですが、購買を決めてからは決断が軽くなるのです。そのため、客単価を上げるためにアップセルとクロスセルを必ず行うようにしましょう。
例えば、スーツを購入する場合を考えてみます。最近は格安のスーツもありますが、良いスーツを買おうと思ったら結構いい値段がしますよね。
例として、あなたが買うか買わないかさんざん迷ったすえに、5万円するスーツの購入を決めたとしましょう。このとき店員さんが、「ついでにワイシャツやネクタイもご一緒にいかがですか?」と勧めてきました。
当初スーツ以外は買う予定がなかったのですが、あなたはもうスーツを買うと決めているので、「ついでだしワイシャツも何着か買っておくか」「よくよく考えるとネクタイも数本必要だよな」と思い、ついつい他のものも買ってしまいます。そして、最初5万円のはずだった買い物が、結局は6万5千円の出費になってしまいました。
あなたも、実際にこのような経験はないでしょうか。スーツを買ったことがあるなら、きっと同じようなシチュエーションを体験したことがあると思います。
スーツ屋の店員は必ずといっていいほど、スーツを購入するお客さんに、ワイシャツやネクタイ、ベルト、靴、カバンなどの関連商品を勧めてきます。なぜなら、すでにスーツの購入を決めているお客さんなら、簡単に関連商品を買うことを知っているからです。
店員側からすれば、最初にスーツの購入を決断させるまではとても大変でしょう。なぜなら、大きな買い物なので、客も購買の決断にとても慎重になるからです。しかし、一度「買う」という方向に気持ちが動けば、その後は簡単に購買の決断をしてしまう傾向が強いのです。
とくに、最初に高額な商品の購買を決断した人は、それよりも安い関連商品の値段にそれほど注意を払わなくなります。
そのため、アップセルやクロスセルを行うと、簡単に客単価を上げることができるのです。
ちなみに、アップセルとクロスセルという言葉を同じような意味で使っている人がいるのですが、混同していても別に問題ありません。オンラインビジネスの業界ではとくにそうなのですが、アップセルもクロスセルもひとまとめにして「アップセル」と言われることが多いです。
重要なのは、顧客が購買を決断した直後に他の商品を勧めるということなので、それが上位版の商品であっても関連商品であっても、どちらでも問題ありません。とにかく、アップセルかクロスセルのどちらかを行うことが大切です。
アップセル・クロスセルを行えば、顧客の一定割合の人は必ず購入します。だから、あなたもぜひアップセル・クロスセル商品を作ってみてください。
アップセル・クロスセルを行うタイミング(場所)
アップセルとクロスセルは顧客が商品を購入した直後に行わなければいけません。そこで、どのタイミング(場所)で行うのが効果的なのかを解説していきます。
アップセル・クロスセルを行うのに効果的なタイミング(場所)は次の3つです。
- 注文ページ
- サンキューページ
- サンキューメール
注文ページでアップセル・クロスセルを行う
注文ページとは、顧客が商品を購入する際の注文確認ページのことです。
ここに「ご一緒にこちらの商品もいかがでしょうか」とか「この商品を買った人はこんな商品も買っています」というように、他の商品を掲載しておくのです。このときに、チェックボックスを用意してチェックを入れるだけで他の商品を購入できるようにしておけば、成約率がかなり上がります。
サンキューページでアップセル・クロスセルを行う
サンキューページとは、商品を購入した後(決済直後)に表示される、感謝の言葉を述べるページです。
このページもアップセル・クロスセルを行うのに最適な場所です。そして、ここでワンタイムオファーを行うとさらに効果的があります。
ワンタイムオファーとは、商品購入後の一度きりのタイミングでしか買えない特別な商品をオファーしたり、このタイミングでしか買えない特別な価格をオファーしたりするものです。ワンタイムオファーの名前の通り、サンキューページを閉じてしまった時点で終了する一度きりのチャンスです。
ワンタイムオファーを取り入れると、顧客も「このタイミングでしか買えない」という焦りと希少価値を感じるので、成約率が高くなります。
サンキューメールでアップセル・クロスセルを行う
そして、最後がサンキューメールです。これは商品注文後に自動で送信される注文確認メールのことです。
ここで感謝を述べるのでサンキューメールと呼びますが、このメールの中でアップセル・クロスセルを行います。メール文で関連商品などを進めて、販売ページに飛ばすんですね。
この3つのタイミングでアップセル・クロスセルを行うことで、客単価を効率よく上げることができるのです。
アップセル・クロスセルの事例:iPhone
ここで、Appleの販売サイト上でのiPhoneのアップセル・クロスセルの事例を見てみましょう。
まず、iPhone 11 Proの販売ページを見てみます。
最初の画面でサイズ違いのiPhoneが2つあります。人により好みが分かれると思いますが、サイズが大きい方が価格が高いので、一種のアップセルといえるでしょう。ここでは小さい方のサイズを選びます。この時点での価格は106,800円です。
次に、カラーを選びます。すると次の項目で容量を選ばせます。「64GB」「256GB」「512GB」と3種類ありますね。ここでもグレードの高いものを提案しているので、これもアップセルの一種です。ここでは、一番上の512Gを選びます。
次の項目で最初のクロスセルがあります。AppleCare+による保証です。「AppleCare+:¥22,800」と「AppleCare+ 盗難・紛失プラン:¥24,800」の2つが用意されています。ここではAppleCare+ 盗難・紛失プランを追加をしておきます。
すると、169,600円という価格が表示されます。かなりいい値段になりますね。
そして、次のページに進むと「一緒にこちらもおすすめです」というように、iPhoneケースやイヤホン、Charging Padなどのクロスセルが続々と続きます。ここでは、「レザーケース」「AirPods Pro」「mophie wireless charging pad」の3つを追加します。
そしてバッグを確認すると、購入商品の一覧と総額が提示されます。最初106,800円だったのが、総額で228,470円と12万円以上値段が上がってしまいました。
おそらく12万円もする買い物だったら、普段は数か月あれこれ迷ったり、悩んだりすると思います。しかし、アップセル・クロスセルの場合は数分~数十分で購買を決断させてしまうのです。これが、アップセルとクロスセルの威力です。
客単価を上げる手法2:バンドルとは
ここでは、バンドル販売について解説していきます。
客単価を上げるためには、アップセル・クロスセル以外にもバンドルで売るという方法もあります。バンドルとは抱き合わせ販売のことです。
いくつかの商品をセットにして売ることで、一回の取引単価が上がります。マクドナルドのバリューセットやユニクロのソックス3点セットなどがバンドル販売にあたります。いわゆるセット販売ですね。
マクドナルドに行ったときにも、セットメニューがあるから何も考えずにハンバーガーとポテトとドリンクのセットを注文してしまいますよね。ボクもドリンクは要らないなと思っても、セットで頼んでしまった方が楽だしお得だなと考えて、結局バリューセットにしてしまうことが多いです。
このように、バンドルメニューを作ることで複数の商品をまとめて販売することができるので、その分客単価が上がります。また、在庫を抱えている場合は、まとめて販売することでバランスよく在庫をはけさせることができるので、これもバンドルで売ることのメリットといえます。
デジタルコンテンツを販売する場合は、会員制サイトを作り全ての商品にアクセスできるようにしておけば、月額課金でのバンドル販売というビジネスモデルを作ることも可能です。
とにかく、バンドルで売ることができればLTVは間違いなく上がりますので、是非あなたのビジネスにも取り入れられないか検討してみてください。
客単価を上げる手法3:松竹梅とは
客単価を上げる方法として、最後は松竹梅で売るという手法を解説していきます。
松竹梅とは、3つの価格帯の商品を用意して、3つの中から顧客に選ばせるという販売手法です。
松竹梅で販売することの目的は2つあります。一つは中間価格の商品を顧客に選ばせることとで、もう一方はプレミアム価格を購入してもらうことでLTVを高めることです。
まず、松に該当するのはプレミアム商品です。顧客の一定割合は上位版を購入します。そのため、価格の高いプレミアム商品が売れることで、LTVが向上するのです。
そして、最も売りたい商品を真ん中の竹の位置に置きます。なぜなら、真ん中の価格帯の商品が最もよく売れるからです。この現象を極端性回避の法則といいます。
梅に該当するのは、廉価版商品です。廉価版商品はおとりとして用意します。真ん中の商品を購入させるためのおとりという意味です。
例えば、あなたがうなぎ屋に行ったとしましょう。そして、うな重を注文しようとした際に「松:4,200円」「竹:2,800円」「梅:1,800円」と3つのメニューがあったとします。あなたは3つのうちどれを注文するでしょうか。
想像できると思いますが、この場合多くの人が竹を注文します。なぜなら、極端性回避の法則が働くからです。極端性回避の法則とは、一番安いものと一番高いものを避けて、中間のものを選ぼうとする人間の心理のこと。「松は高すぎて頼みたくないし、かといって梅を頼んだらケチだと思われるから、無難な竹にしておこう」という心理状態ですね。
実際は、最初から3つのメニューがあるわけではありません。竹の商品ありきでメニューを作っていくのです。つまり、2,800円のうな重を売りたいから、梅1,800円と松4,200円のうな重をあえて用意します。すると、竹を注文してくれる人が勝手に増えていくという仕組みです。
しかし、必ず一定割合のお客さんは松の商品を購入します。すると、松の商品は価格を高く設定しているので、客単価が上がるというわけです。
松竹梅の売れる比率は、だいたい、松が2割、竹が5割、梅が3割程度だといわれています。先ほどのiPhone 11 Proの容量を選ぶときも、松竹梅になっていたのに気がついたでしょうか。
このように松竹梅の価格帯になっています。そのため、256GBが最も選ばれるだろうということが予想できますね。
しかし、512GBを選ぶ人も必ずいます。このとき512GBが売れれば、38,000円分のアップセルに成功したのと同じ意味を持ちます。だから、客単価を上げるためには、松竹梅を用いることも効果的な方法なのです。
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